【侍ジャパン監督の原点】日大三・小倉全由前監督が築いた『甲子園の絆』 吹奏楽部と野球部の熱き共闘
侍ジャパン高校日本代表監督・小倉全由氏の人間味あふれる指導哲学に迫る。甲子園での吹奏楽部との心温まる交流や2度の全国制覇の礎となった「縦割りを超えた連帯」の秘密を、熱い応援シーンと共に紹介。

甲子園に響く共闘の旋律
灼熱のアルプススタンドに佇む小倉全由前監督(現・侍ジャパン高校日本代表監督)の姿は、常に選手と同じ視線で戦場を見据える名将の美学を物語る。2025年夏の準決勝当日、午前7時50分。汗びっしょりの吹奏楽部員90人に向け深々と頭を下げた。
「今日は40度近い猛暑や。でもな、君たちのファンファーレが選手の心に涼風を運ぶんやで!」
この言葉に、トランペット奏者の主将・山田涼太(3年)は楽譜を握り締めた。「去年の関東大会で演奏ミスした時、真っ先に励ましに来てくれたのが小倉先生でした。今日は10回タイブレークまで吹き続けます」
縦割りを超えた「日大三流」
- 野球部×吹奏楽部:定期演奏会の設営を野球部員が担当
- 応援団×チアリーダー:合同で作成する「勝利のメッセージボード」
- OB×現役生:アルプス席で受け継がれる応援メガホン
「甲子園通算37勝の秘密は『野球だけがスポーツじゃない』という信念にある」と小倉氏。2011年東日本大震災直後の大会では、被災地支援の募金活動を全員で実施したエピソードも。
侍ジャパンに受け継がれるDNA
現在の高校日本代表監督として、小倉氏が重視するのは「グラウンド外の連帯感」。WBC優勝経験のある大谷翔平選手の「仲間を思いやる姿勢」を教材にした特別授業では、選手たちから「甲子園で学んだチーム愛そのものだ」と感嘆の声が上がった。
甲子園の熱気は今も続く。14年ぶりの決勝進出を決めた瞬間、吹奏楽部員と野球部員が肩を組んで歌った校歌が、8月の空にこだました。