「モンゴル横綱は全員が全員、横綱の品格じゃなかった」発言の都倉俊一審議委員に“真意”を聞いてみた

都倉俊一審議委員が「モンゴル横綱は全員が全員、横綱の品格じゃなかった」と発言した真意を探る。

品格という言葉が形骸化

豊昇龍は横綱審議委員を黙らせるほどの“品格”ある大横綱になれるだろうか…… 第 74 代横綱に昇進した豊昇龍(25)だが、いまだ、この決定に関して疑問が投げかけられている。

1 月 28 日に行われた横綱審議委員会には、9人の審議委員が全員参加。「満場一致」で推挙された。ただ、1 月場所では安定感を欠き、12 勝 3 敗という成績だった。巴戦で平幕の王鵬(24)、金峰山(27)を下してなんとか優勝したものの、決して圧倒的な強さを見せたわけではない。

「直近 3 場所合計で 33 勝と横綱推挙のための最低ラインには届きましたし、『大関で 2 場所連続優勝、またはそれに準ずる成績』を満たしてはいる。ただ、協会内では 『もう一場所様子を見てもいいのではないか?』 という意見もありました。しかし、照ノ富士が 1 月場所で引退したことで横綱が不在となり、このままだと 32 年ぶりの横綱空位となってしまうところでした。

また、4 月から始まる『大阪・関西万博 2025』では、8 月 3 日に『大相撲万博場所』を予定しており、横綱の土俵入りは目玉の一つです。どうしても横綱空位を避けたかったという事情もありました」(スポーツ紙記者)

ある意味、温情決定と言えなくもない。だからというわけではないだろうが、横綱審議委員終了後、委員で作曲家の都倉俊一氏(76)からは、 「モンゴル横綱は全員が全員、横綱の品格ではなかったでしょ? 闘志はいいけどね。国技であることを自覚してくれれば。立浪親方に指導してもらってね」 といった苦言も飛び出している。ただ、この言葉に SNS では 《確かにモンゴル出身の品格を欠いた横綱はいたかもしれないが、豊昇龍推挙の場で言うことではない》《そもそも横綱審議委員の品格はどうなのか?》《品格という言葉がもはや形骸化している》などと、批判が上がっている。中には《これはヘイトスピーチに当たるのでは?》といった指摘もある。

◆豊昇龍は”品格”について問われ…… 日本相撲協会は、1 月 29 日に東京・両国国技館で大相撲春場所の番付編成会議と臨時理事会を行い、豊昇龍の横綱昇進を全会一致で決定。伝達式後に取材に応じた豊昇龍は、前日の都倉氏の発言を受けて、記者から「品格をどう捉えているか?」と聞かれると、 「そもそも、その品格という言葉の意味がちょっと分からない。どういう意味なんですか?」 と照れ笑いを浮かべながら茶目っ気たっぷりに答えていたが……。

渦中の都倉氏にコメントの真意について伺うべく取材を申し込み、「横綱の品格とは?」「都倉氏の思う品格に該当する横綱は誰か?」について質問状を出したところ、次のような回答を得られた。

〈モンゴル出身の横綱でも素晴らしく潔い横綱もいます。最近では照ノ富士は怪我に耐えて、引退までボロボロな体でありながら、横綱の責任を全ういたしました。しかし、皆さんご存知のように過去には問題を起こした横綱もいたわけです。新横綱豊昇龍は話すととても素直な良い若者です。 昇進祝いの直会(1月 31 日に明治神宮で行われた横綱推挙状授与式後に行われた食事会)では、日本の国技の最高峰に上り詰めた横綱は是非日本文化をよく理解してください、親方もご指導をよろしくお願いします。いくら勝利を重ねてもそれは数字でしかありません。豊昇龍関は我々のハートに残る横綱になってください、と申し上げました。 都倉俊一〉

つまり、都倉氏の思う「品格のある横綱」に照ノ富士は該当しており、豊昇龍にも同様の期待をしている。そのために、あえて強い言葉を使って、叱咤激励したということなのだろう。今回の一連の騒動について、元相撲協会外部委員で漫画家のやくみつる氏(65)に話を聞いた。

◆「品格=“ちゃんと”」 「照ノ富士のフォローがあったとはいえ、(都倉審議委員の言葉は)いささか口が滑りましたね。全員が全員というのは当たっていません。しかし、モンゴル人横綱の中に、品格を欠いた横綱がいたのは事実。だから、都倉氏の発言はヘイトでもなんでもないと思います。横綱審議委員の豊昇龍推挙に関しては、疑義はありません。私が自分なりに解釈しても腑に落ちています。

私は楽観派なので、豊昇龍は十分強くなっているから、もう一場所様子を見てもいいんじゃないかと思っていました。ただ、横綱審議委員の方々は慎重派のほうが多い。おそらくですが、『来場所、もしポシャったら困る。上げられるときに上げとかないと』という慎重な考えで上げたのだろうと思いました」

豊昇龍に望む品格については、次のように話した。

「叔父の朝青龍が事あるごとにしゃしゃり出てくるので、イメージを受け継いでいるような印象ですが、全く違います。豊昇龍に“しでかす”イメージは全くありません。豊昇龍本人も今回、言葉の意味が分からないと率直なことを言っていましたが、あれが本音なんです。日本語を完全に習熟しているわけではないし、日本人でも、その年齢で品格のある若者なんてほとんどいませんよね。

要は、都倉氏は“ちゃんとしなさい”と伝えたかったのだと思います。“品格”=“ちゃんと”ということです。そして、その“ちゃんと”とは、言動や土俵上の所作のことです。彼は素直でいい子です。私は、豊昇龍は“ちゃんとする”横綱になると思っています」

近年、横綱に昇進しても、ケガで何度も休場を余儀なくされ、短命で終わることが多い。豊昇龍には、審議委員を唸らせるほどの結果を残し、品格の備わった大横綱にぜひ、なってもらいたいものだ。

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